ストロベリーフィールズのゆめ

ニートオタクのブログ

『in the box.』におけるちよばんの解釈。

ミュのin the box.を見て思った事と、個人的な解釈について、のブログになります。

 

 


まず最初に、黎明編の中でも『in the box.』という物語は青鉄や鉄道史に詳しくない人でも分かりやすい話だと思うんですね。

3.11について、多分劇場にいる人のほとんどは、痛いほど理解していると思います。実際に当時のニュースを見ていた人(年齢的な意味で)は多いのではないでしょうか。

下山事件も調べたらすぐ出て来ますし、鉄道好きではない方にも想像しやすい事件だと思います。

そう考えると、常磐の(表面的な)感情の変化というのも比較的想像しやすいというか、分かりやすいのではないでしょうか。

それに比べて、千代田の感情は所々分かりにくいですよね。まず彼は何故、わざわざ挨拶に来てくれた常磐に対して挑発的な言葉を言ったのか。

常磐は路線的に遥かに先輩だし、こんな事を言って、どう考えてもメリットなんてないと思います。

しかし、この考えは逆に言えば、起承転結の起になります。(漫画・舞台だから当たり前ですが)

だからこそ、後の千代田のセリフ(例えが通じない〜での『冗談言うの苦手だから』)と歌詞(ED『君のことを知りたくて傷つけたりもしたけれど』)にも繋がるんですよね。あくまで私の想像ですが…。

 

 


ここからは私の中での、小さな論点的な感想を纏めます。

  

①あくまでもショートショートを多く入れる舞台として成立していた鉄ミュが、何故かこの話の歌部分に繰り返しのパートを採用しているのでしょうか?

そして、振り付けの違いは何故なのか。

 

うろ覚えな歌詞で申し訳ないですが、

飲んで食って  車内で無駄に騒いで   

何故か一緒に怒られて  

仙台まで着いたら  当然のように  夜だった

 

駅のホテル  空きは1室  

どっちがソファで  寝るかとか
喧嘩して  そのまま疲れて寝ちまって

当然のように黒歴史

 

でも  俺は  それを箱の中には仕舞わなかった

 

この歌詞を2回繰り返します。

この曲って別に繰り返さなくても十分長いじゃないですか。それなのに、繰り返す。

これについては、歌詞からすぐ分かるとは思います。

 

二人で飲んだ時は  話題に上がって

その度に 「あれは酷かった」

なんて  言い合ってた 

 

その度に』をわかりやすく表しているのかな、と私は思っています。強調表現とかに近いと考えています。

しかも、この歌詞の時に千代田はすごい笑ってるように見えるんですよね。

多分、演者である神里さんがイ段とエ段で口角が上がるタイプなんだと思います。だからこの歌詞部分はめっちゃ笑顔に見えるんですよね。多分…。

 

 

それと、『喧嘩して』の動きが1回目と2回目で変わっています。

1回目は、分かりやすく言うなら、お互いに取っ組み合いの喧嘩って感じです。

2回目は、常磐が千代田をポカポカ叩いているのを千代田はやり返さずに両手で身を守るようにしています。

 

ここの大きな変化はなんなのでしょうか?

東京公演中に見かけたツイートで、1回目は千代田目線、2回目は常磐目線というものがありました。

確かにそうかも!と思い、東京公演中は私もその感覚で見ていたのですが、『in the box.』はあくまでも千代田の気持ちの話なんですよね。

常磐の気持ちが分かるシーンはありません。常磐の気持ちの変化って、あくまでも読み手の書き方・演じ方によって変化するものだと思うんです。

 

そう考えると、これも『その度に』という歌詞に繋がるのではないか?と。

 

酒の肴にして面白おかしく話しているうちに、千代田の中であの二人旅は良い思い出になっていった。

1回目の『喧嘩』では結構千代田がガチな感じで掴みかかってるんですよ。

確かに、嫌いな人とか仲良くない人に対してわざわざ『仙台まで行け』って言われてもいかないし、この時点である程度仲は良いのでしょう。

同じ部屋で寝泊まりする時点である程度かも許してますよね。喧嘩ができるレベルなので、きっとそうだと思います。

 

それでもやっぱり1つのベッドで寝るのは抵抗があります。

なので、その時は本気で対抗しているんですが、二人で酒飲んでワイワイ言ってるうちに、『お前(常磐)が抵抗して暴れて、俺(千代田)はそれを受け止めてた(もしくは受け入れていた)』って事になってるのかな?と思い至りました。

 

あと改めて考えると、ホテルのドアを開けた時点で、二人はシングルルームに泊まることは受け入れてるはずなんですよね。

普通に考えたらそこそこ仲良くないとツインでも同部屋ってキツくないですか?私はキツイです…。

 

あと、原作からの変更点として千代田のモノローグが少しだけ変わったのも、二人の関係性を分かりやすくしてると思います。

原作では

二人で飲んだ時は時々話題に上がって その度に「あれは酷かった」という結論に達した

これがミュージカルでは前述した歌詞になっています。

時々』という言葉がなくなり、『結論に達した』が『言い合ってた』に変わっている。

 

ミュの歌を聴くと、二人で飲んだ時に毎回言い合ってたのかな、と想像させられます。

この変化ってすごい大きいと思うんですよね。

もし、原作の『in the  box.』及び原作全部を読んでいなかったとしても、この3分半の歌詞から二人の仲の良さや関係性をある程度把握できると思います。

 

あともう一点、凄くこの歌で大きいのは2人が歌っている、というところなんですよね。

原作では全部千代田の1人語りなのに、ミュは2人のデュエットだから何度も繰り返されて、千代田だけでなく常磐の中でも『美化されていく』思い出だったのではないでしょうか。

 

 

 

②第三弾にして初登場であった常磐と千代田のストーリーの時系列について

 

常磐線と千代田線のハロウィン→in the box.→例えが通じないヤツ、という流れが余計に箱のストーリー性を際立たせているのではないか、と私は思っています。

ハロウィンを見ると、千代田は常磐とアホやるのを楽しく思っていそうな感じがするんですよね。

ハイタッチするために手を挙げるのは千代田が先で、パッと見は常磐に付き合わされてるのかなとも思うんですけど、本当は千代田も楽しんでるんだと思います。

 

常磐と千代田の初登場シーンで、『面白いことをする2人』をイメージ付けて、『in the  box.』のストーリーに入ります。

あーこの2人ってバカできるような関係性になるまでにも色々あったのか、ってすんなり入るストーリーの順番だと思うんですよね。

 

その後の、『例えが通じないヤツ』では

悪意の無い他人弄って遊ぶのって趣味悪いと思うよ

と銀座に言う千代田。

これコミックスで読むと、登場キャラクター多いし巻数もあるし、正直頭の中でストーリーが繋がらなかったけど、こうやって二時間半の舞台で出されると、この台詞の重みが尋常じゃなくなりますよね。

 

ハロウィンでふざける二人→相手の踏み込まれたく無いところに踏み込んでしまった千代田→仙台で『黒歴史』と言う名の思い出を共有した二人→再び常磐を傷付けたと思う千代田


この流れでこの台詞って、本当にめちゃめちゃ重くないですか?

私の考えなんですが、多分『in the box.』の千代田が言った『うん 行こう きっと行ける』という言葉は、常磐がその時望んでいた言葉じゃなかった、というだけで、彼は傷付いた訳では無いのではないでしょうか。

ただただ、今までみたいな軽口を交わして安心したかったのかな、と思います。

 

けれど、千代田にとってはそれが相手を傷付けた言葉になった、と思っているのかもしれないです。

だから、この銀座とのシーンで嫌がったのかなって思うんですよね。ハロウィンのノリを見れば、二人がふざけあう相手なのは分かりますし。

その関係性でも、やっぱり遠慮というか踏み込んじゃいけないラインが千代田にはあるんだと思います。

 

 

 

③原作とミュにおける千代田の違い

 

ここも凄い大きい点だと考えています。個人的には。

①で前述した通り、千代田役の神里さんって歌う時とか話す時に口角が上がって笑っているように見えるタイプじゃないかな、と思っています。

 

だからこそ、常磐と千代田の曲ですごく楽しそうに見える。

ニコ生で最速放送されてから、BGM的な感じでこの曲を聴いているんですけど、ミュを見た時のイメージよりもすごく悲しい曲に思えてきたんです。

19回見て、すごく楽しい歌だと思っていた歌が、実はオルゴール調のしっとりしたメロディだし、歌い方も特にポップな感じでも無い。

実際に歌っているのを見た時とは印象が全然違くて、改めて演者のお二人の雰囲気が大きかったのかな、と。

 

それと、神里さんの千代田って原作に比べて感情的と言うか結構グイグイ喋るよね、って初日に思ったんですよね。

 

特に私がびっくりしたのが『仕事しながら飲んでも良いのかよ』という台詞です。

ここも原作とは少し違う台詞ですし、まずどちらも千代田が心の中で思ったけど口には出さなかった言葉です。

演劇である以上そりゃ口に出すのは分かる。けれど、「千代田ってこんなテンションで突っ込めるの!?」ってめちゃめちゃ驚いたんですよ、私。

EDの千代田パートでも、めっちゃ存在アピールするし。ミュの千代田はクセになるレベルでキャラが濃いと思ってます。

 

あと、ミュの千代田ってめっちゃ笑い声っていうか息吐く感じで笑いますよね。

ビール受け取った後にフッと笑ったり、肩にもたれて眠る常磐を見て少し微笑んだりとか。

他にも、曲が始まる直前の乾杯も突然酒持って現れた同僚に合わせてちゃんと言ってあげてるの、すごい優しいじゃないですか。

 

原作の千代田も思いやりがちゃんと見えるキャラクターですが、ミュ版はさらに分かりやすく表面化してますよね。

 

 

 

④原作以上に『二人』である事を意識・強調している

 

これは原作の『in the box.』でもそうだけど、登場キャラクターは常磐と千代田の二人だけです。

約10分の話の中で二人しか出てこないって鉄ミュの中でも珍しいんじゃないかな?

 

特にこの『二人』である事を強調してるのが歌の中。   

二人で飲んだ時は話題にあがって その度にあれは酷かったなんて言い合ってた

 

いつでも行けるはずだったんだ

あんなに俺たち 最高だったから 

 

いつでも行けるさ 俺とお前なら

 

何度も酒の肴にして 二人で笑って その度話が盛られて ひどく美化されていくような気がした

 

この歌詞ってどれも『二人』じゃなきゃ成り立たないんですよね。

十分間の二人芝居で3分半の歌。

その中でこれだけ『二人』を強調している。

原作だと、この仙台旅行は他の同僚にはあまり話してなかったとモノローグが入っています。その時に千代田と呑んでるのは東西でしょうか?

 

ミュでは二人芝居である以上、その描写はないけれど仙台旅行が常磐と千代田の二人の共有している思い出の中でも濃い物なんだろう。

多分それを『箱の中』に仕舞うのは勇気がいると思います。

 

 

 

⑤『in the  box.』とお弁当箱

 

これすごいですよね!

この話とこの話を繋げるか!?スゲー!!

初日を見た後、そういう気持ちになりました。

純粋にそこ繋げるのすごいなって思いましたし、千代田のモノローグでお弁当箱を見つめて言ってたのも凄く分かりやすくて好きです。

 

二人のふざけあう関係性を最初に見せてから、本編に入る。

すぐに黎明編に入るよりも、ハロウィンの流れを軽く続けている事で温度差も無いし分かりやすくなるよね、と思いました。

 

 

 

 

 

これは余談ですが、東京公演のいつだったか覚えていないんですけど(多分後半あたりだったと思う)、『知ってますよ』の台詞の後に小さく笑っていて、私が見た公演の中でダントツ性格悪そうな千代田だったんです。これ。

 

 

 

最後に。

初日を見た後、ツイッターで「ミュの千代田、彼氏力がすごい」みたいなツイートをしたんですけど、

大千秋楽を終えた今「ミュの千代田って、鉄ミュ3の登場キャラクターの中で一番人間染みているのでは?」と思っています。

東日本大地震で、被災地にいた人(常磐)に対して、大きな物的被害は受けなかった人(千代田)がどう接して良いのか、どの声掛けが正解だったのか。

これって凄く難しい問いだし、多分人によって答えも変わるし、と言うより答えがあるかも分からない。

 

けれど、まだ終わった話じゃないんですよね。

これからも続いていくものであって、終わりがまだ見えない。

 

どのタイミングで千代田が箱を開けるのかも分からないけど。いつか箱を開けて、中身に触れる事が出来る日が来るのを待っています。

 

 

 

 

 

 

 

けど、原作の千代田ってちょいちょい箱の中に触れてる感じもする。エラーとかもそうだし、多分お弁当箱の1段目の少しくらいは開けてるんだと思う。

 

 


 

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。次は仙台で常磐と千代田を見たいですね!




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20220806追記

iTunesに鉄ミュ曲が配信されたので、『常磐と千代田の旅』を聴きながら、改めて自分で読んでみました。

限界オタクって感じがして我ながら面白かったです。頑張って書いたんだな…、四年前の私…。


所々気になる文章を修正して、本日再度上げ直しました。


このブログ記事を投稿した当時、たくさんの方に読んでいただきとても嬉しかったのを覚えております。


懐かしいのと同時に、やはりとても好きなストーリーだなぁと、改めて思いました。

たくさんの人に観てもらいたい舞台です。